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<書評>戸惑いから気づく「生の声」=ふるまいよしこ著『中国新声代』



「生の声」「本当の姿」を伝えたい、知りたい。

誰もが思うことながら、しかしその実現はとても難しい。語り手が自分の立場を押しつけようとする。そういったわかりやすいバイアスが邪魔しているケースもあるだろう。しかし問題はもっと本質的なところにある。なにかの事柄について論理立てて語ること。その語るという行為自体が、なにかを切り捨てて一つの物語に「加工」することにほかならないからだ。

こんなありがちな問題をなぜ長々と語ったかというと、今回取り上げる本『中国新声代』が「生の声を伝える」課題に挑み、ユニークな成果を上げていると感じたためだ。

本書は女優、漫画家、ブロガー、企業家、経済学者、ビデオクリエイターなど中国人18人のインタビュー集。中国在住の日本人著者・ふるまいよしこは、「中国で起こる事件、あるいは中国社会の出来事について、日ごろから中国社会に向けて発言している中国人識者の話を、そのまま日本の読者に伝えたい」と動機を語っている。

「中国人識者の話を、そのまま」という方針は本書で一貫している。つまり日本人読者向けに調整されることなく、中国の文脈そのままでの発言が記録されている。章ごとに背景の説明はあるとはいえ、日本人になじみのない話題や単語も多く、戸惑う人も多いのではないか。

だが、その戸惑いこそ「生の声」を理解する糸口なのだ。私たちが考える論点や言葉ではないもの。私たちの想像とはずれた、中国の人々やインタビューイが重要だと考えている事柄が浮かび上がってくる。

一例を挙げよう。歴史学者・袁偉時氏のインタビューには「非制度化文化」という言葉が登場する。「非制度化された文化とはなんだ?」「そもそも制度化された文化なんてあるのか?」と最初は引っかかった。しかし読み進めていくと、公権力が介入して統一的に作り上げられるような「制度化された文化」に対置された概念であり、そうした政府の押しつけ文化と市民の選択による文化とを分けていることがわかる。

「なるほど、社会主義の国だけに文化すらも国から強要されるのか」とだけ考えるのは早計だ。袁氏はさらに「非制度化文化」を当然のものとしてはならないと話し、人権など世界共通の普遍的な理念を受け入れるべきと提案している。本書を糸口に調べていけば、中国ではナショナリズムを背景に、「西洋とは異なった東洋的、すなわち中国的な近代がありうる」という主張が力を持ちつつあることを知るだろう。袁氏の主張は、公権力の押しつけに反対すると同時に、国際標準の理念を拒否しかねないナショナリズムに抗するためのもの。「中国の今」と格闘する知的営為にほかならない。

もう一度繰り返そう。「中国人識者の話を、そのまま」を目指して書かれた本書は、決して読みやすく、するりと理解できる本ではない。だが、その引っかかりにこそ「生の声」を、現代中国を理解するカギが隠されている。

ふるまいよしこ『中国新声代』集広舎、2010年、2300円+税。




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